セメント瓦の再塗装のメリットとデメリット

屋根のリフォーム時にポイントになるセメント瓦の再塗装。
そのメリットとデメリットを紹介と屋根葺き替えを行ったほうがよいケースについても解説しています。
1.セメント瓦の塗装とは
1-1.セメント瓦を塗装する目的

セメント瓦はもともと安価で意匠性の高い素材として、戦後から平成10年あたりまで広く普及していましたが、現在は耐久性が高い陶器瓦を使用されることがほとんどになりました。セメント瓦の生産はほとんどされておらず、新築工事や屋根リフォーム(葺き替え)でセメント瓦を見なくなりました。しかしながら、セメント瓦は今でも多くの屋根に残っており、時期に応じてメンテナンスが必要です。そのメンテナンスの一つとして再塗装があります。
セメント瓦は紫外線や風雨、温度変化などが原因で塗装が剥げやすく、剥げた塗装を放置しておくと土台であるセメント自体が劣化(セメントの成分であるカルシウムが流出)します。セメント瓦の塗装はこうした事態を防ぎ、見た目と防水機能を維持する為に、約10年に一度の間隔で再塗装をします。再塗装を行うことで、セメント瓦の耐久年数である約30年使用できます。ただし、約30年以上経過したセメント瓦のひび割れ・劣化が酷い瓦を再塗装しても意味がなく、防水機能の回復も期待できません。その場合は、屋根リフォーム(葺き替え)となります。
1-2.セメント瓦の塗装方法
セメント瓦の塗装方法について説明します。
セメント瓦を再塗装するためには、下地処理を行う必要があります。
高圧洗浄のイメージ写真
まず、高圧洗浄をかけます。15~20MPa程度の洗浄圧力を用い、表面の塗装と汚れを落とします。落としきれない汚れについても、ワイヤブラシなどを使って手作業で除去していきます(ケレン)。表面をしっかりと綺麗にしないと、再塗装した際に塗膜剥離が起きてしまいますので、丁寧な仕事が求められます。その後、エアブラシを使って瓦のつなぎ目にある砂を吹き飛ばし、瓦のズレも補正していきます。割れている瓦があれば補修や交換も行います。
次にセメント瓦の表面に下地調整材を塗布します(下塗り)。これにより下地の凹凸を埋め、表面を均一にしていきます。次に中塗りと上塗りですが、シリコンやフッ素といった塗料を使って行います。素材によって機能面や価格が違ってくるので業者と相談して決めていきましょう。通常屋根や外壁の塗装は下塗り、中塗り、上塗りの3回行います。
ちなみに陶器瓦の場合、再塗装はできません。再塗装ができる瓦はセメント瓦と覚えておくと良いでしょう。
2.セメント瓦の塗装のメリットとデメリット
2-1.セメント瓦の塗装のメリット

ではセメント瓦を塗装するメリットについてみていきましょう。
セメント瓦が経年劣化するにつれて表面の塗装が剥げていき、その下のセメント部分が露出していきます。そうなってしまうとカルシウムが流出してしまい、やがて表面がボロボロの状態に。そうならないためにも、適切な時期に再塗装が必要です。再塗装によって防水性を保持し、瓦の劣化を防止することができます。
また瓦が動くことでできたキズや、飛散してきた石などで欠損した部分を塗装でカバーできます。完全な欠損ではなくヒビ割れなどの軽微なものであればより効果的です。次に色褪せなどの改善です。塗装時は鮮やかな発色でも風雨や日光への露出によって劣化が進んでいきます。こうした色の変化を塗装によって改善し、新築当時のような色合いにアップデートできます。
また当然色には人それぞれ好みがありますので、高級感ある見た目や味のある色合いの日本家屋風塗装に変化させることも可能です。古くからある住宅街であれば、瓦のカラーバリエーションはそれほど多いわけではありません。瓦を塗装するだけで洋風の建物のように見せたり、鮮やかな色を取り入れて目立ったりと理想的な色の屋根を実現できるでしょう。
2-2.セメント瓦の塗装のデメリット

一方でセメント瓦の再塗装にはデメリットもあります。まず塗装なので、数年後に再度塗りなおしが必要になります。
塗装は瓦と瓦との接触や飛散物によってはがれやすい上に、そもそもセメント瓦は塗膜が強固に付着しにくいためはがれやすい欠点もあります。これは業者の施工技術にもよるので、セメント瓦塗装に長けた業者選びが重要です。
加えて再塗装には費用が掛かります。屋根の塗装だけ、と考えがちですが、塗装には屋根の高圧洗浄や瓦の調整、補修なども発生するため費用が高額になりがちです。このようなデメリットが再塗装にはあると覚えておくとよいでしょう。
セメント瓦は半永久的に利用できる陶器瓦とは異なり、塗装の剥がれやメンテナンスが必要です。
もし知らず知らずにセメント瓦の屋根だったという方、塗装が必要になったけど定期的に行うのが面倒という方は、屋根葺き替えで陶器瓦の屋根に変えるのも、一つの方法です。
3.セメント瓦の塗装費用の目安
セメント瓦の塗装費用の目安となります。使用する塗料によって料金が変わります。
こちらは目安となりますので詳しくは地元の信頼おける塗装業者にお問合せされることをお勧めします。
3-1.項目ごとの単価
項目 | シリコン塗料 (標準版) | フッ素塗料 (グレードアップ版) |
足場設置 | 850円/㎡ | 850円/㎡ |
高圧洗浄 | 200円/㎡ | 200円/㎡ |
養生 | 300円/㎡ | 300円/㎡ |
縁切り(タスペーサー) | 300円/㎡ | 300円/㎡ |
下地調整 | 400円/㎡ | 400円/㎡ |
下塗り | 700円/㎡ | 700円/㎡ |
中塗り | 1,000円/㎡ | 1,700円/㎡ |
上塗り | 1,000円/㎡ | 1,700円/㎡ |
破風 | 450円/㎡ | 450円/㎡ |
軒天 | 450円/㎡ | 450円/㎡ |
各種諸経費 | 工事費用の5% | 工事費用の5% |
3-2.お見積もり例イメージ 「100㎡(30坪)の家」3LDK~4LDKのお部屋
シリコン塗料(標準)使用
項目 | 単価 | 数量 | 金額 |
足場設置 | 850円 | 100㎡ | 85,000円 |
高圧洗浄 | 200円 | 100㎡ | 20,000円 |
養生 | 300円 | 100㎡ | 30,000円 |
縁切り(タスペーサー) | 300円 | 100㎡ | 30,000円 |
下地調整 | 400円 | 100㎡ | 40,000円 |
下塗り | 700円 | 100㎡ | 70,000円 |
中塗り | 1,000円 | 100㎡ | 100,000円 |
上塗り | 1,000円 | 100㎡ | 100,000円 |
諸経費(5%) | 23,750円 | ||
合計(税抜き) | 498,750円 |
フッ素塗料(グレードアップ版)使用
項目 | 単価 | 数量 | 金額 |
足場設置 | 850円 | 100㎡ | 85,000円 |
高圧洗浄 | 200円 | 100㎡ | 20,000円 |
養生 | 300円 | 100㎡ | 30,000円 |
縁切り(タスペーサー) | 300円 | 100㎡ | 30,000円 |
下地調整 | 400円 | 100㎡ | 40,000円 |
下塗り | 700円 | 100㎡ | 70,000円 |
中塗り | 1,700円 | 100㎡ | 170,000円 |
上塗り | 1,700円 | 100㎡ | 170,000円 |
諸経費(5%) | 30,750円 | ||
合計(税抜き) | 645,750円 |
4.まとめ

ここまで、セメント瓦の塗装におけるメリットとデメリットを紹介してきました。
セメント瓦は経年によって塗装がはがれますが、そこに汚れがたまったり苔が生えたりして見た目にも古くなっていきます。全体的にも色褪せが発生するため、建物のイメージダウンは避けられません。塗装の剥がれなどを放置してそのままにしてしまうのは最も危険で、瓦のずれ、割れを引き起こし、やがては雨漏りのリスクを抱えることになってしまいます。
こうした事態を避けるため、セメント瓦の塗装が重要になってくるわけですが、その際にどのような再塗装の方法があるのか、費用はいくらくらいなのかといったポイントをチェックして、業者を吟味・手配すべきです。塗装の内容をよく理解いたうえで工事の依頼を行いましょう。
もちろん、屋根の状態によっては再塗装があまり意味をなさない場合もでてきます。そんな時は屋根葺き替えを行い、メンテナンスが少なくて済む陶器瓦の屋根に変えるのも一つの方法です。ぜひご自身の希望にあった屋根づくりを行ってください。